多摩住民自治研究所 議員の学校
第58回 議員の学校
戦後80年に考える
市町村議会から世界平和を築くには
2025年10月27日(月)28日(火)
会場:三多摩労働会館 (立川駅北口) (オンライン併用)
🚃 JR立川駅下車 北口から徒歩3分


■特別報告
自治体が挑む外交 ~トランプ政権下の日米関係と沖縄の挑戦
講師: 猿田 佐世 さん 新外交イニシアティブ (ND)代表
ND上級研究員・弁護士(日本・ニューヨーク州)
■第2次トランプ政権が誕生し、国際社会に大きな変化を及ぼしています。外交や安全保障は、官僚と国会議員が動かしている遠い世界のもの、と考えてしまいがちです。しかし、米軍基地の集中によるしわ寄せを受ける沖縄県では、以前から米国への働きかけを行ってきました。新外交イニシアティブ(ND)というシンクタンクを立ち上げ、沖縄の動きに関わり、地位協定の調査などを行ってきた立場から、日米関係の現状をお話ししたうえで、沖縄県の経験をふまえ、地域から平和の声を発信していくための道筋を考えて見たいと思います。
■プロフィール
早稲田大学法学部卒業後、タンザニア難民キャンプでのNGO活動などを経て、2002年日本にて弁護士登録、国際人権問題等の弁護士業務を行う。2008年コロンビア大学ロースクールにて法学修士号取得。2009年米国ニューヨーク州弁護士登録。2012年アメリカン大学国際関係学部にて国際政治・国際紛争解決学修士号取得。ワシントン在住時から現在まで、各外交・政治問題について米議会等で自ら政策提言を行う他、日本の国会議員や地方公共団体等の訪米行動を実施。米議員・米政府面談設定の他、米シンクタンクでのシンポジウム、米国連邦議会における院内集会等を開催。研究課題は日本外交。基地、原発、日米安保体制、TPP等、日米間の各外交テーマに加え、日米外交の「システム」や「意思決定過程」に特に焦点を当てる。
議員の学校

■戦後80年、平和と人権の想像・実践舞台としての地方自治
~「地方自治の本旨」が保証する「権利としての地方自治」
講師: 池上 洋通 氏 元東京都日野市役所職員、「議員の学校」前学校長
■日本国憲法は、「全国各地の地域は、そこに居住する住民の個人的な権利の具体化を認め合い、自由な意見の交換の上に共同体を形成することができる」という趣旨で地方公共団体の自主的な形成と運営を基礎にした「地方自治」について、 第7章に規定しました。この講義では、原則的な規定を理解することから始め、戦後80年間における数々の中央政府による「改正提案・改悪的政策の強行」やそれに対する抵抗などを確認します。そして現在、日本の地方自治体制はどういう現実に向き合っているのかを、国際的な視野も含めた客観的資料をできるだけ丁寧に掲げ、学び合いを深めていきます。
■プロフィール
1941年静岡県生まれ。講師は自治体職員、研究機関常勤役員、千葉大学教育学部非常勤講師(社会教育原論)などの経験を持つ地方自治理論・政策の実践的研究者。著書・論文は地方自治体論をはじめとして、保健医療、社会福祉、教育、防災など、自治体政策の全分野にわたります。
■著書(共著含む)
『人間の顔をしたまちをどうつくるか』(自治体研究社)、『生きたかった―相模原障害者施設殺傷事件が問いかけるもの』(共著 大月書店)、『「学び」を止めない自治体の教育行政』(共著 自治体研究社)、『「もっと生きたかった」やまゆり園事件と人権』(自治体研究社) ほか多数。
議員の学校

■教育委員会制度と公共施設再編
~戦後80年の歴史からとらえる
講師: 荒井文昭 氏 都立大学名誉教授、多摩住民自治研究所理事長
■「われらは、さきに、日本国憲法を確定し、民主的で文化的な国家を建設して、世界の平和と人類の福祉に貢献しようと する決意を示した。この理想の実現は、根本において教育の力にまつべきものである」。これは、1947年教育基本法 前文からの引用です。戦後日本は戦前の反省に立って、教育の目的を「人格の完成」としました。そして、「平和的な国 家及び社会の形成者」に一人ひとりがなっていくことがめざされました。教育のあり方はまた、地方自治のあり方と深 く結びついています。この講義では、教育委員会制度の基本を学ぶとともに、公共施設再編を戦後80年の歴史からと らえることによって、基本的人権としての「教育を受ける権利」をわがまちでどのように実現していくのか学びあいます。
■プロフィール
1959年生まれ。東京都立大学大学院、同人文学部助手を経て、愛知教育大学教育学部、東京都立大学人文社会学部にて教育行政学を担当。博士(教育学)。地方自治と学ぶ権利の関係について追求している。著書に『教育の自律性と教育政治―学びを支える民主主義のかたち』(大月書店、2021)、『世界に学ぶ主権者教育の最前線―生徒参加が拓く民主主義の学び』(学事出版、共編著2023)ほか

■戦争の傷と向き合い、平和を創る地域の試み
講師: 神子島 健 氏 東京工科大学教授、NPO法人多摩住民自治研究所 副理事長
■山口県の旧長生炭鉱では、海底から戦時中の事故で亡くなった労働者のものと思われる遺骨が発掘されました。調査を進めてきた市民団体は、さらなる発掘に向けて政府に協力を要請していますが、現時点では政府側から否定的な発言が出ています。平和について考えるための記憶をとどめる遺構や記録は日本各地にあります。地域で過去と向き合い、記憶を共有する方法は色々とあります。世界文化遺産となった佐渡島の金山で、日本側の追悼式に韓国政府が参加を見送ったように、過去をめぐる取り組みの過程では、摩擦が起きることもあります。地域でこうした記憶を共有して活かしていくために、市民や自治体はどのようなことができるか、みなさんと一緒に考えてみたいと思います。
■プロフィール
1978年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学専攻博士課程修了(学術博士)、同専攻助教(社会思想史、相関社会科学)を経て、現在、東京工科大学 教養学環 教授。多摩住民自治研究所副理事長。主に思想や文学を通して、近代日本の戦争認識に関する研究をしている。平和構想研究会会員、事務局。「多摩市男女共同参画社会推進協議会」「羽村市 男女共同参画推進会議」委員。
■著書『戦場へ往く、戦場から還る-火野葦平、石川達三、榊山潤の描いた兵士たち』(2012、新曜社)、『戦後思想の再審判』(共著編2015、法律文化社)、『身近な戦争遺跡“多摩火工廠” ~多摩火工廠から米軍施設へ 80年の変遷を考える~』(2021 多摩市/多摩市平和展市民会議)
※神子島健氏のプロフィールがまちがっておりました。お詫びし、訂正いたします。(2025.10.15)
第58回 議員の学校 のお誘い
戦後80年に考える 2⃣ 「市町村議会から世界平和を築くには」
■満州事変、日中戦争、アジア・太平洋戦争へと続く十五年戦争は、アジアの広大な地域の人々の生命を奪い、日本社会にも計り知れない犠牲を強いました。この過誤の反省をふまえた日本国憲法は、大日本帝国憲法を根本的に見直した「改正憲法」であり、国民主権・基本的人権・国際平和という画期的な原則を掲げ、国会・内閣・司法の三権と、これらと対等に位置づく地方公共団体によって原則を具体化する体制を定めました。
■しかし現実には、米国の軍事路線の下で軍事体制が拡張し、沖縄をはじめ全国で住民の権利と自治、社会保障や教育の基盤が侵害されてきました。憲法が否定したはずの軍事力が、安保体制の名の下に復活・増強され、基地の固定化と強化が進められています。地方自治体と住民は、この矛盾に抗し、自治の営みを権利としてとらえ直し、憲法が定める「地方自治の本旨=住民自治・団体自治」の原則の上に、参加と合意に基づく行政、透明性ある財政、福祉と教育の充実を追求してきました。
■今回の講座は、これらの事実を振り返りつつ、日本国のそして居住する自治体の主権者として、平和と人権の豊かな展望を開くことを期して開催します。
